どうも、たかしです。

前回の記事では「特定外来生物」について触れ、生き物の中には飼育ができず、生きたままの移動・運搬も禁じられている生き物がいることをお伝えしました。

特定外来生物の例

記事を書く際、特定外来生物についてネット上でいろいろと調べ物をしていた折に、とある記事が目に付きました。

YAHOO! ニュース:猫を虐殺し食べた大学院生が逮捕。「ノネコだから大丈夫だと思った」という主張は通るのか?

URL→https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/35c054dfb0f847f27b22e6ef1f2f1b9f6a21ac87

この記事をご覧になった方は、どのような感想を抱かれるでしょうか?

そりゃあ、猫を殺した食べたら捕まるに決まってるよ」でしょうか。

それとも「猫を殺したら捕まるなんておかしい!」でしょうか。

僕自身の思いはというと、どちらかというと前者の方でした。

ですが、それは別に「動物も人と同じぐらい大事にすべき」だとか「命は全て平等に尊重されなくてはならない」だとか、そんな価値観から来る感情的な問題を言っているのではありません。

ではなぜかというと、「特定外来生物」である「ヌートリア」を捕獲し食べた方が逮捕された事例を知っていたからです。

「特定外来生物のヌートリアですら捕まえて食べたら逮捕されるぐらいなのに、普通の猫だったらなおさらでしょ」というのが僕の中のロジックでした。

ですが、調べてみたところこの2件はそれぞれ別個の法律によって立件され、逮捕に至ったという経緯があるみたいです。

いったいこの2件にはどのような違いがあるのか? 食べていい生き物と食べてはいけない生き物の違いとは何なのか? 調べて分かったことを書いていきたいと思います。

①猫の件について……動物愛護法違反

1.事件経緯

逮捕された大学院生は、なぜ猫を捕獲して食べたのか? なぜその様子をYouTubeにアップロードしたのか?

ただ単に無知な若者が知識もなくやってしまった犯行なのかというと、どうもそうではないようです。

逮捕された大学院生は、このように供述しています。

「ノネコなので、大丈夫だと思った」

しかし、実際に捕獲して食べた猫は狩猟鳥獣に指定されている「ノネコ」ではなく、動物愛護法で保護されている「地域猫」だったために、動画を見た地域住民が通報して逮捕されてしまったという経緯だったのです。

では、この「ノネコ」とは一体どういう猫のことを指すのか。「地域猫」との違いは何なのか。解説していきます。

2.「猫」は「動物愛護法」により保護されている。

一般的に私たちが「猫」と言う場合には「イエネコ」を指します。

「イエネコ」は、ペットショップで売られているもの、飼育されているもの、野良で生活しているものなど様々な環境に生息し、また種類も様々ですが、これら全て古代に家畜化された猫を祖先とする「人と共に在る猫」たちの通称です。

なので野良猫であっても、もともと家畜化された猫が逃げ出した、もしくは捨てられたものであれば、それは「イエネコ」の仲間と言うことになります。

イエネコの対義語としては、古代から野生種として今日まで生息してきている「ヤマネコ」があります。

では、「イエネコ」ではなく古代から野生化で生活してきた「ヤマネコ」を「ノネコ」と呼ぶのかというと、そういうことでもないのです。ややこしいですよね。

「ノネコ」とは「イエネコ」の中にあって、それでいて人との関りを持たずに完全野生化して生活している猫のことを指します。

猫を取り巻く区分を図にすると以下のようになります。

この図の通り、「ノネコ」と「野良猫」は違う区分に属する猫を指す言葉になります。

そして、ここが重要なのですが、図の「飼い猫」「野良猫」に当たる猫は、「動物愛護法」により「みだりに殺したり傷つける」ことが禁止されています。

動物愛護法では、保護されるべき「愛護動物」について以下のように定義しています。

「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。

 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は虫類に属するもの

動物の愛護及び管理に関する法律第44条

ここで挙げられている「猫」とは、人に飼われている飼われていない関係なく、完全に野生化している「ノネコ」以外の全ての「イエネコ」を指します。

つまり、完全に野生化したイエネコであるところの「ノネコ」、そして生来の野生種である「ヤマネコ」以外の全ての猫は動物愛護法の保護対象に指定されており、正当な理由なく傷つけたり殺してしまったりすると処罰の対象となるということなのです。

3.愛護動物である「猫」と「ノネコ」をどう見分ける?

令和4年3月に環境省が出した「動物虐待等に関する対応ガイドライン」では、ノネコについて以下のように記載しています。

市街地や村落に生息する無主の野良犬、野良猫は愛護動物に含まれるが、常時山野にて、野生の鳥獣等を捕食し生息している野生化したノイヌ、 ノネコ 等は、鳥獣保護管理法第2条第7項の規定に基づく狩猟鳥獣に位置付けられており、愛護動物には含まれない。ただし、犬、猫とノイヌ、ノネコを明確に判別することは難しく、市街地や村落以外の山野で発見された犬、猫であっても、その行動圏に人が居住等している場合は、原則として愛護動物の犬、猫として考えるべきである。

動物虐待等に関する対応ガイドライン 2.対象となる動物

つまり「愛護動物である『猫』と『ノネコ』は違う生き物だけど、見分けがつかないから人が関わってるっぽい猫は全部愛護動物だと思った方がいいよ」ってことですね。なんともいいかげんなものです。

町中で見かける猫は全て「愛護動物」であり、みだりに傷つけたり殺したりしては当然いけません。そして、山林でみかけた猫であっても、もしもその付近に人里があって、少しでも人との関りがある猫であればそれも「愛護動物」なわけです。

まあ、「猫を狩猟するのはやめとけ」ってことですよね。ですので、「狩猟鳥獣からノネコを外せ」といった声は一定するあるようです。実際、ほとんど意味をなしていないわけですしね。

鳥獣保護管理法に記載されている「ノネコ」を元にして狩猟をした人物が逮捕されてしまったわけですから、今後「ノネコ」廃止の流れはますます強くなるのかもしれません。

結構長くなってしまったので、ヌートリアの件に関してはまた次回解説していきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。