どうも、たかしです。

今回は小屋暮らしにおける「水回り」のこと、特に「排水方法」について考えていきます。

前回の記事で、空き家の排水管を掘り返してその先がどこに続いているのか調べてみた所、埋められていた排水溝に沿って庭を横断し、結局土地の斜面に向かって垂れ流しにされていたということが判明しました。

コンクリートブロックによる排水溝
その先は隣地と接している土地の斜面に続いていた

前回の記事の終わりでは、このように垂れ流しにして地面に浸透させて排水を処理する「地下浸透式」の排水方法は、下水道の通っていない山奥の古い家ではありふれている、というような話をしました。

自治体が設置を推奨している「浄化槽」も、設置費用に50万円以上かかり、維持費もかかるために現状僕は浄化槽の設置を考えてはいない、という話もしたと思いますが……。

では、排水を垂れ流しにするというのは、法律的にはOKなのか? 

浄化槽を設置する義務だったり、それに関わる罰則だったりは存在しないのか?

やっぱりそこのところが気になってきますよね。僕のようにブログやYOUTUBEで発信している身であればなおさらです。

という訳で、今回は「生活排水」や「し尿の処理」、「浄化槽の設置」などに関する様々な法律を参照していき、「小屋暮らしに置いて排水に『地下浸透式』を採用することの是非」について考えていきます。

「小屋暮らし=下水の無い土地」と言い切ってしまっても過言ではないぐらいなので、小屋暮らしにおいて生活排水をどうするかはかなり切実な問題です。そこを今回はきっちり白黒つけていきたいと思います。

それではやっていきましょう。

①雑排水とし尿について

まず先に確認しておきたいことがあります。それは生活排水において、「雑排水」と「し尿」では取り扱いが異なるという点です。

それぞれの言葉の定義を明確にしておくと

  • し尿……人間の大便と小便を合わせた呼び方

(参考:Wikipedia「屎尿」)

  • 雑排水……一般家庭から出される排水の中でも、し尿と水洗便所からの排水を除くもののこと

(参考:東建コーポレーション建築用語辞書「雑排水」)

言葉の定義のされ方からも分かる通り、家庭排水について考える際には「排泄関連排水」と「それ以外の排水」に分ける必要があります。法律関係においてもこの2つの取り扱いに関しては明確な差があり、当然のことながら「し尿」に関しての方がより厳格に定められています。

②「し尿」の取り扱いについて

結論から言えば、し尿の垂れ流しは法律において禁止されていますが特に罰則はなく、現時点では見過ごされているということなのではないかと思います。

以下にその理由について述べておきます。

それではまず、法的にも厳格な取り扱いが求められている「し尿」に関して、どのような取り決めがされているのか確認していきます。

「浄化槽」の取り扱いについて定めている「浄化槽法」において、「し尿」については以下のように触れられています。

何人も、終末処理下水道又は廃棄物の処理及び清掃に関する法律第八条に基づくし尿処理施設で処理する場合を除き、浄化槽で処理した後でなければ、し尿を公共用水域等に放流してはならない。

浄化槽法 第三条

つまり、浄化槽を介さずに河川に通じる側溝もしくは河川そのものにし尿を垂れ流しにする行為は、法律によって明確に禁止されているということがここから分かります。

またこの「浄化槽法」では、新しくトイレを施設する際に浄化槽を介さずに放流するような仕組みにすることを禁じています。

何人も、便所と連結してし尿を処理し、終末処理下水道以外に放流するための設備又は施設として、浄化槽以外のもの(中略)を設置してはならない。

浄化槽法 第三条の二

つまり、河川や側溝に排水する仕組みのトイレには浄化槽の設置が義務付けられているということです。

では、例えば今現在山奥で排泄物を河川に垂れ流しにしているような集落がもしあったとして、そこの村人が全員罰せられるのかというと、恐らくそんなことはありません。

なぜならば、主にし尿の取り扱いについて触れたこの「浄化槽法第三条」には、特に罰則規定されている訳ではないからです。

浄化槽法には他にも設置する際の申告だったり、逆に廃止する時の申告、管理の取り扱いや取り扱い管理者に対する規則などには罰則が規定されているのですが、基本的には「浄化槽を使用しない者」への罰則は定められていないようです。

つまり、し尿を垂れ流しにすることは法的にアウトだが罰はない、言ってしまえば見過ごされているような状況にあるということですね。「家電リサイクル法」の特定家電排出者に対する規則も、リサイクル券購入&指定取引場所への搬入義務の規定はありましたが罰則がありませんでしたので、それと似たような感じなんじゃないかなと思います。

とはいえ、「家電リサイクル法」違反への罰則はなくても、家電を適当な場所に遺棄すれば「不法投棄」に当たってしまい罰せられるのと同じように、「浄化槽法」へのし尿取り扱いに関しての違法に罰則が無くてもし尿を垂れ流しにしていたら実際は何かしらの法律や条例に抵触してしまう可能性がありますので、まあし尿を垂れ流しにするのはやっぱりよした方がいいとは思います。

②「雑排水」の取り決めについて

こちらも結論から申しますと、「雑排水」については基本的に河川垂れ流しについて明確に禁止している法的な記述はなく、あくまで「生活排水対策への強力・努力義務」に収まっているような感じでした(浄化槽設置済みの場合除く)。

さて、()の中が割と意味不明だと思いますので、以下にその理由を述べていきます。

まず、先ほども参考にあげた「浄化槽法」の第三条の続きにこのような記述があります。

何人も、浄化槽で処理した後でなければ、浄化槽をし尿の処理のために使用する者が排出する雑排水を公共用水域等に放流してはならない。

浄化槽法 第三条

この文章、めちゃくちゃニュアンスが分かりづらくなっているのですが、要は「浄化槽を設置している家庭は雑排水を河川などに放流してはならない」ということが書かれています。

つまり、あくまで「浄化槽を設置している家庭」への条文なのです。

では浄化槽を設置していない、絶排水を垂れ流しにしている家庭への規則は? ……少なくとも「浄化槽法」の中には見当たりませんでした。

なんだか不条理な気もしますが、「浄化槽法」はあくまで浄化槽関連の法律ですからね。最もと言えば最もなの、かも?

じゃあ浄化槽を設置していない家庭ならば河川に雑排水を垂れ流しにし放題なのかというと、法的にはそのようには表現されていません。

水質汚濁防止法」という、こちらは主に工場や事業者に対する排水規制について定められている法律なのですが、こちらには第十四条の六(国民の義務)に以下のような記述があります。

何人も、公共用水域の水質の保全を図るため、調理くず、廃食用油等の処理、洗剤の使用等を適正に行うよう心がけるとともに、国又は地方公共団体による生活排水対策の実施に協力しなければならない。

水質汚濁防止法 第十四条の六

また同じく「水質汚濁防止法」の第十四条の七(生活排水を排出する者の努力)にもこのように書かれています。

生活排水を排出する者は、下水道法その他の法律の規定に基づき生活排水の処理に係る措置を採るべきこととされている場合を除き、公共用水域の水質に対する生活排水による汚濁の負荷の低減に資する設備の整備に努めなければならない。

水質汚濁防止法 第十四条の七

これらを要約すると、「生活排水に関しては、国や自治体の推奨する水質対策に協力してもらって、水が汚れないよう努力してくださいね」ということになります。し尿の取り扱いとは異なり、「禁止」ではなく「協力・努力」とかなり緩い表現になっていることが分かると思います。

もちろん、これらの法律にも罰則は規定されていません。そもそも「協力・努力」に明確な定義がない以上どこからが違反なのかの線引きもできませんからね。

そのため、今現在でも下水の通っていない地域で汲み取り式のトイレを使用している家庭でしたら雑排水の垂れ流しは恐らく普通に行われていて、国や自治体も完全に黙認しているといった状況なのだと思います。

③実際に問い合わせてみた

とはいえ、生活排水に関しては自治体で独自に規則を設けているという話もあります。

という訳で、実際に小屋暮らし予定地のある地域の排水に関して、役所の方に問い合わせて聞いてみました。

以下がその時の会話になります。

たかし

新しく住む空き家の排水が垂れ流しなんですけど、

このままでも大丈夫なんですか?

職員

基本的には浄化槽の設置をお願いしたいですが、やはり

垂れ流しという家庭も多いですから強くは言えません。

ただ、し尿に関しては垂れ流しはやめてくださいね

うーん模範解答。

やはり、自治体としても河川垂れ流しの家庭が多くある状況は把握しつつも、法的にも強く言える根拠はないため黙認しているという状況のようですね。

ただ、し尿に関しては河川垂れ流しを禁止していると。こちらも見事に法律通りです。

④まとめ

今回は小屋暮らしにおいて排水を「地下浸透式」にすることの是非について考えていきました。

結論としては「法的には雑排水であれば地下浸透式でも問題は無い」ということになりましたね。ただ、やはり「し尿」……排泄物関係に関しては垂れ流しにするのは良くないので、予定ではし尿を肥料として再利用する「コンポストトイレ」を採用するつもりです。

ただ、今回のこちらの結論というものは「地下浸透式の環境への影響」というものは全く度外視しにして考えたものですから、「いやいや、それでもちょっと……」という方はいらっしゃるのではないかと思います。

恐らく僕のブログを閲覧なさっている過激派の環境活動家の方なんかは、今頃ディスプレイを叩き割っているのではないでしょうか。

いねーかそんな奴。

僕自身、生まれも育ちも下水通いまくりの郊外で育った準シティーボーイですから、排水を地面にただただ垂れ流しというのは結構抵抗があります。

とはいえ、流石に現在の状態で合併浄化槽を導入するというのは、コストの面だけでみてもとても現実的とは言えません。なので、現在の「地下浸透式」の排水環境を踏襲せざるを得ないのですが……。

少しでも現在の排水の「垂れ流し感」を低減したいので、何かしらの改造を施そうと考えています。

それを一体どうしていくのかは……また次回のお楽しみということで。

以上で今回の記事は終わりです。

また次回の記事でお会いしましょう。ここまでお読みいただきありがとうございました。