どうも、たかしです。
前回の記事では、苦労の末にセミを13匹捕まえることができました。
今回は捕まえたセミの下処理をし、解体して身を取り出していく作業の様子をお伝えしていきます。
それではやっていきましょう。
①冷凍庫で締める
捕まえてきたセミたちはまだまだ元気で、虫かごの中で暴れ狂っています。
このまま調理しようと虫かごを開けた日には、中のセミが飛び出して家の中が阿鼻叫喚の様相となるのは想像に難くありません。
そのため、いきなりですがセミたちを虫かごごと冷凍庫に投入し、凍らせて締めたいと思います。
さよなら!
ドアを閉めても、しばらくは冷蔵庫の中からセミの断末魔が聞こえてきていました……。一匹鳴くための器官の処理が不完全だったやつがいたみたいです。
恐ろしくも申し訳ない、とても複雑な気持ちになりました。これが命をいただくということなんですね。
どうか安らかに眠ってくれ……。
冷凍庫に入れて30分ぐらいで、セミたちはカチコチに固まって完全に締まりました。
アブラゼミ2匹に、クマゼミが11匹。今回捕まえた公園にはクマゼミが多かったですね。
なお、このうち3匹がメスです。メスかオスかは、腹弁のあるなしで見分けることができます。ある方がオスです。
捕まえる時に交尾をしていた2体は、冷凍してもなお繋がったまま息絶えていました。なぜかタイタニックのラストシーンを思い出してしまいました。ローズは手を放しちゃったけどね。
②水洗いをする
ボウルに水をためて、セミを揉み洗いしていきます。
セミは木から木へと移動し、地面を這うことはないので汚れはないように見えますが、目には見えない汚れがついている可能性も考えしっかり水洗いしていきます。
セミは飛ぶときにおしっこを飛ばしますから、それがついているかもしれませんしね。
③下茹で
お湯を張った鍋に塩を投入し、セミを塩ゆでにしていきます。
塩ゆでにするのには、セミのうま味がゆで汁に逃げにくくなるのではないかという狙いがあります。そして逆にセミの身に塩っ気が入って味が良くなるのではないかという期待もあります。
身の内側までしっかり火を通したいので、5分以上しっかり茹でます。
バッタなんかは茹でると外殻が赤く変色してくるのですが、セミにはそのような目立った変化はありませんでした。しいて言うのであれば全体的に色が落ち込んで、薄黒くなるぐらいですかね。バッタと比べて、茹でた見た目はそこまで美味しくなさそうです。
下茹では殺菌や寄生虫の処理も兼ねている訳ですが、セミにつく寄生虫ってあまり聞いたことがないので調べてみました。
どうやら「セミヤドリガ」というガの幼虫が寄生していることがあるようですね。
ただ、このセミヤドリガは主にヒグラシに寄生するみたいですし、人体への害もないようなので特に心配する必要は無いかと思われます。それにしても凄い絵面だ……。
茹で上がったセミはこの後すぐ解体に入るので、冷水で冷やします。
④解体・身を取り出す
さあ、ここからが下処理の山場になります。
茹で上がったセミを一匹ずつ解体し、その身をほじくり出していく作業に入ります。
流石に昆虫解体の経験は無いので若干手が震えますが、カニの身をほじくり出すようなものだと割り切って頑張りたいと思います。
まずは邪魔な羽をむしります。結構固くくっついているので、根元を持ってねじ切るようにして取り外します。
身を取り出すため殻を剥きたいのですが、ここまで茹でてなお外殻は硬く、剥がれそうになかったため包丁で半分に切ることにしました。
※セミの内臓が映ります。ここから若干閲覧注意。
殻が相当硬く、苦労しましたが何とか切れました。特に胸部の背中側の殻が超硬いです。常に木に止まっているセミからすると外敵から一番狙われやすいところなので、特に防御を固めてあるのかもしれません。
ここから爪楊枝で身をほじくり出していきます。
殻の中に少し赤っぽいような茶色っぽいような部分があるのがお分かりでしょうか。こちらが今回メインの可食部の「飛翔筋」になります。
この部分は先ほどむしり取った翅の直下にある筋肉で、セミはこの膨大な筋肉を駆使してあの見事な飛翔を成し遂げている訳ですね。
セミをはじめとした昆虫が空を飛ぶことができるのは、体重の軽さのわりに力がとても強いからだと聞いたことはありますが、なるほど、これだけ立派な筋肉を持っているのならあれだけのパワーが出るのも納得です。
セミはもう一カ所筋肉の発達した部分があります。それがこちらの「発音筋」です。
鳴く虫として有名どころのスズムシやコオロギなどは、鳴き声を出すのに翅を使います。発達した飛翔筋を音を出すのに利用しているため、小さな体であれだけ大きな音を出すことができるのです。
それに対してセミは、鳴くのに翅を使いません。翅はあくまで飛翔する用途のみに用いて、鳴くのにはお腹の中にある「共鳴室」という器官を使います。そのため、おなかの中に「発音筋」という「共鳴室」を震わせるための筋肉があります。
しかし、発音筋は胸部の飛翔筋と比べると非常に小さく、そこまでの力が出せるようには見えませんでした。となると、共鳴室をはじめとしたセミの鳴くための器官の一つ一つが、いかに大きな音を出すために効率よく設計されているものなのか、実に驚かされます。
段々慣れてくると、包丁で切るよりも手でむしった方が早いということに気付き、そこから作業の効率は段違いに上がりました。
外殻の一つ一つはとても硬いため、刃物を通すのは一苦労なのですが、節になっている部分は非常に脆く、手でも簡単に取り外すことができます。これは、昆虫の体の構造が「頭」「胸」「腹」の3部分に分かれているためで、まずはその3つに分解してから足を毟ると、簡単に胸部の筋肉を取り出すことができました。
初めはおっかなビックリでしたが、だんだん無心で解体することができるようになりました。人間の適応力には凄まじいものがあります。
⑤下処理完了
13匹分全ての身をほじくり出し終わりました。量としては、10グラム行くか行かないかぐらいでしょうか?
とても少ないようにも見えますが、昆虫から一部の筋肉だけを抽出して得た量としては破格だと思います。セミの食材としての潜在力がここに現れていますね。
見た目は完全にシーチキンです。これを出されてセミだと分かる人はまずいないのではないでしょうか?
これは昆虫食期待の星となり得るのではないかと思います。もしもセミがコオロギぐらい養殖するのが容易な昆虫だったら、確実にこちらの方が推されていたのではないでしょうか。いやあ、惜しい……。
こちらが今回使わなかった殻の部分になります。体積比で言うと全体の7,8割ほどは破棄することとなってしまいます。
これは非常にもったいないですね。なにせ頭部は全く利用することなく捨ててしまっていますから、SDGsの観点から言ってもこれはよろしくないような気がします。
次回セミを調理する際には、この余った部分を活用できるような方法を考えておきたいと思います。
以上で今回の記事は終わりです。
次回は調理・実食編になります。お楽しみに!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。